落語感想文22【林家が立川流を越えた文七元結】

シンプルに落語の感想をひたすら書く『落語感想文』のお時間です。「鬼滅の刃 遊郭編」アニメ化に伴いまして『遊郭についてこどもに教えられない』とお怒りの保護者の皆さんに落語の郭噺で学びなさいよみたいな気持ちで郭噺を連投してますが、今回個人的には一番良い郭噺である「文七元結(ぶんしちもっとい)」です。

死んではいけないと言うメッセージ性

内容を詳しく知りたい方はいつも通りWikipediaとかへどうぞ!むしろ聞いたり観たりしてください。

ざっくりお話ししますと、

博打に明け暮れて身ぐるみさえも取られた左官の長兵衛さんには一人娘がいて、博打に負けた腹いせに奥さんにきつくあたる長兵衛を止めて欲しいと長年お世話になっている吉原の「サノヅチ」と言う女郎屋の女将に直訴しに行く、娘の願いを聞いて博打で積もった借金を返すために女将は50両を貸し出す。
ちなみに返済期間まで女将は娘さんを預かりしっかりした女性に育て上げる。ただ、50両を返さなければ店に出す。その後の責任は持たないよ!
そこまできつく御灸を据えられた帰りに浅草の今でいうアサヒビールのうんこビルが見える有名な吾妻橋で身投げをしようとするべっこう問屋の若者文七を長兵衛はみかけてしまう。
文七はお店の大事な50両をすられたから自分が死んで侘びると言う。必死に文七を説得し娘を担保に借りた50両を文七に渡して長兵衛は去ってしまう。
実は文七の50両はすられたわけではなくて、得意先に忘れただけだった。
文七の粗相の為に大切なお金を渡した長兵衛へのお詫びに訪れたべっこう問屋の主人と文七。最終的には長兵衛の娘と文七が結婚すると言う話である。

吉原は悪いところではない

ジャンル分けなんて解釈次第で私の中では郭噺ですがWikipediaだと人情噺とくくられてます。後にご紹介する「お見立て」や「お直し」「品川心中」とかはドロドロした感じ。誰かの借金を方に身売りされた女性が遊女となり集まる世界が遊郭と言うのが古今東西なイメージですが、文七元結ではちょっと違って、長兵衛の娘を預かると言った際の女将さんが「借金を返すまではどこに出しても恥ずかしくない女性になるように育てる」みたいな話をしております。

お店によりけりでサノヅチは名店だからこそそんな話になるのでしょうが、有名なところにはお殿様や金持ちの旦那が来て「身請け」と言ってお店からスカウトするように娶ってしまう世の中でしたからそれに見合った教養を身につけさせる教育機関でもあったと言うことが分かるかと思います。

死んじゃダメ、生きなきゃ

昨年、度重なる芸能人の自殺報道の度に「死神を聞きます」みたいなことを話しましたが本当は文七元結を聞くべきですね。その強いメッセージが文七の身投げを止める長兵衛の台詞に込められます。

目の前で死のうとする見ず知らずの文七に必死の説得で身投げを止めた上で娘を担保に借りた50両まで渡してしまう。『この50両を返せなかったら娘は花魁になって傷物になるかもしれないが生きる、俺もかかあもひもじいが生きる。でも、お前は50両ないと死ぬっていうじゃないか、俺にはそれが見過ごせない』

長兵衛は博打にはまって身を滅ぼしたかも知れないが性根はしっかりしてる。だからこそ救われていく伏線だったのかも知れないけど、とにかく愚直に知らないやつの身投げを止める姿はこの噺の肝と言える。サノヅチの女将が長兵衛に灸をすえる場面とこれだけ聞けば文七元結は良いと言うのは言い過ぎだろうか?(笑)。

この文七元結が凄い

今回は林家たい平版の文七元結をお薦めしたい。持っている音源は立川談春と志らくのものとたい平の高座でしたが今回は立川流より林家に軍配を上げたいです。

初代三平、木久扇、ペーパー夫妻、当代正蔵、こん平とテレビのイメージから林家だと舐めきってしまう部分もありました。たい平版文七元結は立川流のを聞いた後に初代三平の家が根岸だし吉原から近いから郭噺もやるんだろうな位に思ってましたが志らくや談春のに比べてたい平の文七元結は吾妻橋での長兵衛の説得に必死さが出ていて好みですね。

あと、クライマックス直前べっこう問屋の旦那が長兵衛の家を近所の人に尋ねた際に『昨晩から夫婦喧嘩してるのはあそこだけだからすぐ分かる』と言う妙な紹介で向かいますが無理もなくて、娘が命がけで作った50両を「知らない身投げしようとした若者にくれてやった」と言う弁明を信じられず詰問する長兵衛の奥さん、弁明しすぎて喉がつぶれたと言う解釈をして見せた林家たい平は面白かった。正直、サノヅチと吾妻橋のシーンだけで良いやと思った文七元結を最後まで聞くための理由になった。

文七元結を知るきっかけは立川談春の「赤めだか」から修行時代の談春が真打ちがやる大ネタの文七元結を勉強会でやって談志の逆鱗に触れて築地へと修行に行かされるくだりがあった。談春版は御灸を据える女将の貫禄が良かったが志らくはつまらないくすぐりが多かった。とにかく林家たい平、舐めたもんじゃないわと感心したのだった。

人気ブログランキングへ


落語ランキング

投稿者: shakson5

しまだくらぶです。生まれも育ちも住いも埼玉県の昭和54年早生まれの40代です。婚活の歴史とか趣味のDJとか色々お話して、皆さんの暇潰し等のお役に立ちたくてブログを書いております。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。