落語感想文22【地獄からの使い立川藤志楼という男と鬼のいない地獄「お直し」】

落語感想文、とにかく落語の感想を独自の解釈で書いてます。最近は「鬼滅の刃」のアニメの新シーズンは『遊郭編』らしくて世のお父さんお母さんが「子供に遊郭をどう教えたら?」と迷っているから『じゃあ、落語の郭噺を見たら?』なんて事で連続的に郭噺の感想をご紹介してます。

郭噺シリーズは『二階ぞめき』 『明烏』 『文七元結』『お見立』に続いて5回目の今回は「お直し」です。個人的には遊郭がいかに地獄かを語られた噺でこうした振り返りをやらなかったら触れずに終えていたような話です。

古今亭志ん生が得意とはネット上にあり、私が持っている音源は志ん生の息子である古今亭志ん朝と立川藤志桜こと高田文夫のもののみでした。感覚としてはこれまでに出て来た廓噺とは違ってながして聞いていて、さしてまた聞き返そうと思っていなかったという所が正直な所でしょうか。ただ聞き返してみて分かったのは、今回の趣旨『遊郭を知るには廓噺を』という事を考えると実はこの立川藤志桜の「お直し」がベストなんじゃないかという気がしてきました。

ちょっとだけ内容に触れます

「お直し」ってどんな噺か?というと、遊郭のお店で人気が落ち目になってしまった花魁がいる。その花魁に「元気出しなよ」と声をかける同じ店の牛太郎というお店が恋仲になってしまう。お客が恋に落ちる場所であるところの遊郭、お客さんが花魁をお嫁に貰うというならばいざ知らず、いわば店員と仲良くなる社内恋愛などご法度。店の主人が二人を呼び付け二人の本気度を確認して、そこまで言うならばと二人を結婚させて仕事のお世話までしてしまう。花魁は店の受付として牛太郎はそのまま残して店で勤めさせるという恩情裁定を下します。

ちょっと、食事はお店で済ませられるからお金は貯まる一方で奥さんはしっかり働くが夫は博打に染まり店の仕事も休む始末。折角の恩情を裏切られたと二人を結婚させた店主からクビを言い渡されてしまいます。困り果てた夫婦ですが夫が紹介を受けた「蹴転(けころ)」という場所で商売をすることになります。蹴転とは吉原の中でも端の端でお店の広さは2畳くらい、そんな劣悪な環境に呼び込みは客を蹴って転がすように店に入れてぼったくる。それゆえ蹴転と呼ばれるようになっているそうです。つまり、「遊郭の地獄」と呼ばれているそうです。そんな地獄で語られる夫婦の物語がこの「お直し」です。鬼のいる遊郭の中でも最も位地獄に生きる人間の噺とでもいえましょう。

地獄の橋渡し、藤志楼

志ん朝と藤志楼の二人の高座しか聞いていません。志ん朝は正統派の「お直し」でした。もっとも、志ん朝は全てにおいてそうなわけですが、対する藤志楼は『古典だから余計なくすぐりはいらない』と言いながら入れずにはいられない性分でくすぐりを入れて脱線はするものの車輛を線路に戻す。しかも、他の噺家の話を入れる内輪受け系のくすぐりだから全然面白くないわけだが、藤志楼の凄いなと思えたのはしっかりと分かりやすく説明するところにある。

立川藤志楼という噺家は放送作家の高田文夫である。立川流家元の立川談志が在りし日に落語のすそ野を広めるべく『立川流Bコース』というのを設けた、弟子を1から育て上げていくAコースに対してBコースは有名人を弟子にしたというものだった。その中の一人であり一番最初に真打になったのがこの立川藤志楼という事になる。高田文夫は寄席芸能をお茶の間に広めようと色々な仕掛けを行った男でその一環として自身の独演会で出した演目では噺の世界観を今の一般人に伝えるべく、噛み砕いて噛み砕いてしっかり丁寧に説明してみせる。プロの噺家であれば、独自の解釈をするものもあろうがそこまで客席と舞台には越えてはならない一戦のようなものが在るのに対して藤志楼にはその一線がないそんな高座を独演会で展開してみせた。その中でもこの藤志楼の「お直し」は傑作だと感じる。改めてしっかり聞いて「花魁が牛太郎だったころの夫に惚れたなれそめ」を語る箇所はかなり心に染み入る。

悔しいけど高田文夫に完敗した一席

高田文夫は個人的には嫌いです。ラジオリスナーとして「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」をよく聞いてますがそこでの色々なお笑い芸人に対しての元祖老害とでもいうような振舞、俺様具合には辟易する。ビートたけしのオールナイトニッポンでは懐刀として動いていた功績は間違えないとはいえ、公にああいう振舞をしているのは演じているのかもしれないけどなんか嫌でよっぽど聞きたいゲストが登場しない限りは聞かないけれども、この一席で思いっきりひっくり返してしまうようなそんな一席である。まず、遊郭とはそんなところかというのを知りたい場合は特にお知らせしたい一席です。鬼のいない地獄もあるという事ですね。

 


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投稿者: shakson5

しまだくらぶです。生まれも育ちも住いも埼玉県の昭和54年早生まれの40代です。婚活の歴史とか趣味のDJとか色々お話して、皆さんの暇潰し等のお役に立ちたくてブログを書いております。

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