AWESOME MASTER PIECE『狂猿』鑑賞記

デスマッチのカリスマ・葛西純のドキュメンタリー映画「狂猿」を見てきた。まだ公開したてでなかなか上映する映画館少なくて午前中から始まるような作品ではない。早速予告編である。
ちなみにFilmarksって映画感想を書くアプリにネタバレのない文章も書いてみましたのでよろしかったらどうぞ。

皮肉なもんで実家から徒歩圏内のイオンシネマ大宮ではやっているけど、我が家には生後八ヶ月の乳飲み子がいて午後4時には保育園に迎えなきゃならなくて、それを軸に考えると午後2時くらいに終わらないと東京から埼玉の自宅には戻れず、そうなると夜勤者ゆえに出勤前に行ってやろうと6月7日(月)、職場に程近い池袋・シネマロサで鑑賞する。
しっかりと、GOTCH STYLE PILE DRIVER TシャツにTAKAYAMANIAキャップとプロレス大好きですアピールを施して鑑賞する。ちなみに予告編を見て居ても立っても居られなくなり、葛西純の入場曲の音源が欲しくなり調べたら廃盤らしくてメルカリで購入した。

#美獣で予習

予備情報なしで見るのがいつものスタイルですが今回は毎週聞いてるラジオ日本「真夜中のハーリー&レイス」に川口監督が出てて、見ようかなが絶対見ようになり前売り券も購入しました。改めて聞いたけど観たら倍楽しめるので是非本編延長戦あります。

川越のおばさんの生まれ変わり

私はプロレス超大好き!である。人生の支えになってるし一時期ある団体のスタッフしたりしてたからまさに生活も支えて貰ってた。両親の祖父がどちらともプロレス好きで母方の祖父の姉に当たる「川越のおばさん」はTVでプロレス観戦後興奮してこの世を去った、ほどなくして俺が産まれてて川越のおばさんの生まれ変わりだからお前のプロレス好きはしょうがない』と言われたことがある。
 
ただデスマッチは知らない。存在やルールをと言うわけではなく、生で見たことはないし映像も自ら進んでみたことはない。見たと言ったら大仁田厚の各種デスマッチや大仁田以外だと凶器は一斗缶やボーリング玉やラダーを使った試合とかそんなレベルである。だから、この作品が自分にとってのデスマッチの原体験となった。この映画の感想を書くにあたり、これくらいのデスマッチの知識であることはお伝えしておこうと思う。

デスマッチ初体験が葛西純と「狂猿」でよかった

作中は迫力のデスマッチシーンばかりでした。言ったらホラー映画いやそれ以上のエグいシーンがあってこっちは42歳のおっさんだけど声をあげたり「ひぃー」って顔ひきつらせながら見たり、この時期声出してエンターテイメント見ちゃいけないというルールはあるけれども、声をあげないのは無理でした。竹田誠志が裂傷で筋肉片がはみ出て自らちぎったみたいなシーン、針金が左頬から右頬まで貫通したりとかが顕著だけど、どの試合シーンでもロープにくくりつけられた蛍光灯を抜いてチャンバラの様に始まったのだが考えたらそれも当たり前ではない。そんな中で「(欠場するような)怪我もせず、生きて帰るまでがデスマッチ」と言うコピーのなんと衝撃的なことか。しかも、特に葛西純とミスターデンジャー松永光弘のインタビューを向けられたときの達観したような穏やかな口ぶりに感じる狂気はジワジワと印象に残る。
さらに、ホームセンターで調達してオリジナル凶器を作業部屋で作成する葛西純の姿にデスマッチを極めるファイターは真面目な人が多いのだなぁと思う。
戦ってるレスラーだけじゃなくて、レフェリーやセコンドの真剣な姿もこの映画は映し出す。リング上の蛍光灯が壊された時にその破片をリング外にかき出す、きっとデスマッチでは当たり前な風景をしっかりクローズアップして観ることが出来たのは川口潤監督もデスマッチに馴染みがなかったからなのだと思う。

川口潤というフィルターから見る葛西純

「真夜中のハーリー&レイス」でも語っていたが川口潤監督は急に葛西純の欠場前最後の試合での撮影に駆り出された2019年の作中の冒頭部分が最初の撮影だった。それ自体に違和感は無かったがそこから続く試合映像への没入感は川口潤監督が葛西純に没入したことよるものだったのではないかと思う。プロレスにまつわる映像を色々見てきてるけど、作中のプロレスが一番かっこいい映像だった。放送用の映像ではない斬新さ、映画の為に作られたプロレスではないリアル、そこに映像作家川口潤の躍動感が相まって今までにない映像でこれを一番最初にデスマッチ体験としてみられたのは良かった。
訳も分からずカメラを回し始めた頃、葛西純について回った地方大会で葛西純から『心臓に気をつけて』とリング上で言われてにこやかに返すおばあちゃんにデスマッチファンの裾の広さを感じる、プロデュース興行のデスマッチカーニバルで終えても良いところをそこから繋がった杉浦透戦に繋がる。
杉浦透戦だけ、プロレスそのものではなくて効果音が挟まれる。飽きさせないための工夫と言えばそれまでだけど、これこそ川口潤が葛西純を追いかけて生まれた作品だったのかもしれない。試合に勝ったチャンピオン杉浦透は葛西純にマイクで何か伝えていたがそれも音でかき消された。何を言ったか?知りたかったけど、これはFREEDOMSの映画ではなく葛西純の映画なのだからこれが正解なのだ。
順を追って我々は映画監督・川口潤のフィルターを通して葛西純を見ていたわけだが、我々はしっかりと葛西純のメッセージを観ることが出来た。
 
買ったのに未だに葛西純の自伝を読めてない。

目次をめくってて「狂猿ではこんなエピソードが語られるのか」と想像はしてたが予想の10%くらいだった。全てはコロナ禍のせいに違いない。2019年撮影開始が欠場の始まりで復帰予定の5月までの物語は誰もが口にする「コロナのせい」もあり、ファンにとって当たり前だった「Devil/Cocobat」での大カサイコールが皮肉にも最初が一番でかいコールになった。観てる側の感情でしかないけど、作中Devilの音量はかかかるたびに右肩上がりで最後は最高潮だった。川口潤監督は音楽にまつわる映画を多数撮ってきたこともあって、その音楽のこだわりは凄くて、使用許可も監督自身が取ったそうでパンフレットに選曲リストがあって、そのこだわりは凄かった。

カリスマ葛西純

大きな枠で言うとコロナ禍に生きる人間の家族のドキュメンタリーだった。言ってしまえば自分が気持ちが暗くなるから見たくないタイプのジャンルだったがそこの真ん中にいたのが葛西純だからそうではなかった。
SNSでよく登場していた息子の姿こそなかったが、奥様もジプシー嬢こと娘さんも映っていて、ネットショップで販売されたTシャツの袋詰めから配送まで映っており、色々つまびらかにされている光景はミッキー・ローク主演の「レスラー」を思い出す。

まあ、あっちは作り物だけど、こっちはリアルだ。
 
復帰した直後のコメント『コロナの暗い気持ちをプロレスで晴らしたいと言うお客さんがいるのだから、「お客さんの前でプロレス出来て良かった」みたいな気持ちでやってちゃ駄目なんだ』と語る。それでこそカリスマと言われる由縁なのだろう。最初に書いた通り、葛西純をほぼ知らない状態だから復帰後の葛西純が放つ言葉はカッコよくて、映画終わって即Twitterフォローしたし、名言集とかないのかな?なんて思ったりしたがなかった。本編の最後じゃないけど、背中で語る葛西純は強烈な言葉を持つレスラーでもあった。
もちろん、デスマッチレスラーとして闘う姿ありきでその言葉に説得性は持つところはあるけれども、葛西純は闘い抜きにしてもカリスマなんだと実感する。映画終わって売店に行って受けた刺激のお礼をと思ってパンフレットを買って他にも何か買おうと思って、作中にあった通販サイトクレイジーファクトリーを見たらアイテムは売り切れてた。

ノーマルなプロレスが漫才でデスマッチがコント

誰か忘れたけどデスマッチレスラーが本編で言った言葉だが、体一つで勝負するプロレスラーに対して道具を使いまくるのがデスマッチと言う比喩に感心する。同じプロレスでも違うよ的な意味ではあるけど『客をどれだけ沸かせるか?』と言う意味ではプロレスとしては横一線だからやっぱり『うちらは道具使っちゃってるから』みたいな負い目があるのだろうか?なんて感じたりした。見てる方からしたら、楽しんだもん勝ちだから、それが道具を使っていようといまいとデスマッチに揺さぶられている自分に気付きました。

コロナが明けたら

なんかしゃらくさくて言いたくない言葉でもあるんだけど、この鬱蒼としたコロナウィルスというマスクで覆われた闇が明けて、椅子を一つ明けて座らなくても良い様な世の中になり、事あるごとに理由を付けて居酒屋に集まり、みんなマスクなしで握手したりハグしたり唾を飛ばして笑える日々が戻ってきたら、後楽園ホールに行って「Devil」に合わせてみんなと一緒に大カサイコールを叫びたいものだ。

プロレス好きの仲間と集まってプロレス楽曲DJをしてて、Devilがかかってみんな自分よりコアなプロレスファンばかりだから当たり前のように「カサイコール」してて、みんなに合わせてたけど、今度からは自発的に言えるから、その時を楽しみにしたい。あと、もう1度この作品を見たい、そして「こんな時代あったよねぇ」なんて言ってやりたい。狂猿はそういった意味で魂を揺さぶるのに、歴史を振り返るためのマスターピースである。

最後に余談。シネマロサで座席を選んだ際に目線はどこかを聞いたら「F列G列くらい」と受付のかたに言われたので迷わずFUCKの頭文字であるFを選ぶことにした。本当はど真ん中の7を指定したけど、すでに先客ありその隣の5番にした。この回に10名くらい鑑賞してたけど、F列に座る人が一番多くて、もしかしたらみんな同じ理由なのかなと勝手に想像してニヤニヤした。


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投稿者: shakson5

しまだくらぶです。生まれも育ちも住いも埼玉県の昭和54年早生まれの40代です。婚活の歴史とか趣味のDJとか色々お話して、皆さんの暇潰し等のお役に立ちたくてブログを書いております。

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